お便り/4月号未掲載分

トロントの話題3選

ジミー狩野(牧男)85歳  カナダ・トロント

 「飛行機横転事故」
 2月17日にトロント・ピアソン国際空港で飛行機が上下逆さまになるという信じられないような着陸事故が発生。機体はアメリカのミネアポリスから乗客乗員80名を乗せ飛来したDelta4819便。 怪我をした21人中19人はすでに病院を退院し残り2人の重症患者が入院中。死亡者が出なかったのはまったくの奇跡だった。 19日、着陸瞬間のビデオが公開された。専門家の見解では、着陸時に右側の着陸装置(ランディング・ギア)に大きな負荷がかかり破損し、その衝撃で右翼全体が本体から外れたことで左翼の揚力で機体は回転し上下逆さまになったそうだ。なお着陸した直後に右翼部分から火の手が上がりそのまま滑走したが、機体本体には延焼しなかったことが不幸中の幸いだった。フライトは着陸直前までなんの異常もなかったそうなので今後の本格的な調査が待たれる。(2月20日記)

「塩が足りない」
 日本でも記録破の大雪とか・・・ カナダのトロントでも異常気象のせいか2月10日から17日まで断続的に雪嵐(ブリザード)と低温が続いていた。 そのせいかトロントでは塩が足りないと問題になっている。トロントでは冬の間に多量の塩が各家庭で必需品になるが、在庫がなくなったと騒ぎ出している。 皆様はご存知でしたか? トロントでは雪かきをした後に道が凍らないように必ず塩や溶解塩を撒く事が条例で定められている。 もし自分の家の前で滑って転倒し事故でも起きればその家の家主が訴えられるのだ。 しかも公道はスノータイヤ以外チェーンを装着したり、スパイクタイヤなど一切禁止されている。 化学溶解塩は高額なので一般的に各家庭では岩塩の20kg入りを一冬に4〜5袋用意しておく。 しかし、今年のように大雪や厳寒が続くとこれらの品物はすぐ売り切りとなってしまう。 生産は、過去の平均的積雪データと前年のデータをもとに生産計画されるそうだが、ここ数年降雪量が少なく暖冬だったことから、この冬の生産量が少な目なのかもしれない。 お店に在庫があれば探し回ることになるが、すでに2月下旬でこれから3月下旬まで何回降雪があるのかが思案のしどころだ。 余談だが、トロントに移住したばかりの頃、春先にオンタリオ湖畔に立つとなぜか磯の香りがして来た。オンタリオ湖が海の感覚になるのが不思議だった。 後で分かったことだが、それは冬季の間多量に撒かれた塩が解けてオンタリオ湖に流れ込むせいと判明し納得した。春が待ち遠しい今日この頃だ。(2月20日記)

「カナダの国旗」
 カナダの国旗はお馴染みの楓の葉がデザインされている。デザインにあしらわれているのは「シュガーメープル」という種類。その国旗が制定されて今年で60周年になる。それを祝うイベントが先日2月15日にオタワで開かれた。日本では国民が国旗を祝うイベントというのは聞いたことがないと思う。 55年前、トロント空港に降り立った時、至る所に掲揚されているカナダの国旗の多さにはいささか面食らった覚えがある。 国旗を掲揚することさえ非難を受けることがある日本では、国旗を祝うイベントなんか聞いたことがないと思う。カナダではこの国旗メープルリーフが国民の団結を表す象徴となったのが1965年だ。 ちょうどその同じ頃に日本からのカナダ移住がカナダ連邦政府より正式に許可された。筆者もその年にカナダ移住を申請したので思い出深い。 だが、2022年2月にカナダで発生した新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの義務化と非接種者に対する行動制限に反対する一連の抗議運動と国境の橋封鎖には、カナダ各地からカナダ国旗を掲げた大型トレーラトラックの車列や数千人の歩行者抗議団が銘々にカナダ国旗を振りながら一路オタワを目指し行進した。これがいわゆるフリーダム・コンボイという過激派の抗議活動だった。 しかし、この過激行動によって、国旗掲揚を多くの人はそれに巻き込まれないようにと、メープルリーフの国旗掲揚を控える傾向が出ていた。 しかし、トランプの「カナダは51番目の州になれ」発言で、当然それに反発するカナダ国民は団結の象徴として最近メープルリーフのカナダ国旗を積極的に掲揚するようになっている。 トランプが行ったことの影響で唯一プラスをつけても良いことかも知れない。(2月15日記)