シルバー川柳とは
シルバー川柳の魅力は、作品で笑い、年齢でうなずき、2度も楽しめるところ。小紙が1996年の創刊号から川柳の公募を始めたのは「情報を提供するだけではなく、読者に参加していただきたい」という想いから。わずか3通からのスタートでしたが、笑い合い、うなずき合い、投稿を誘い合い、元気を確かめ合い、投稿数は増えていきました。豊かな経験から生まれるユニークで感動あふれる作品は、一つの素晴らしいジャンルに値すると考え「シルバー川柳」という名前をいち早く付けさせていただいています。小紙では、60歳以上の方がよまれた川柳のみを“シルバー川柳”と定義しています。
シルバー川柳の書籍化
老いの日常をユーモラスに、時にしんみり歌った作品の傑作選。
累計55万部突破!! 毒蝮三太夫氏推薦!シリーズ化されて続々と刊行中です!
90歳以上の作品を集めた『超シルバー川柳』、女性だけの『ババァ川柳』、男性だけの『ジジィ川柳』も大好評、入門書、かるたも登場!
シルバー川柳の動画化
シルバー川柳の講演活動
小紙編集長が各地で講演。内容はシルバー川柳の魅力、驚く心身への効果、投句者とのエピソード、作句法等。
シルバー川柳が歌に
シルバー川柳が、名古屋の合唱団の創作曲に取り入れられました!
名古屋で75年も活動を続けている名古屋青年合唱団(現在はメンバーがシニア世代中心)の皆さんが、川柳をモチーフにした歌『想いを言葉に ~川柳でつづる合唱シアター~』を作り、2024年6月に開催した同合唱団の『音楽会』にて初演されました。 下記の歌詞には、合計13句の川柳があり、その中の2句は河出書房新社刊『シルバー川柳』の掲載句から選ばれました。残りの句は、団員と関係者の皆さんが詠んだ80句ほどの中から選ばれたものだそうです。 同合唱団の佐藤俊隆副団長(61)は「音楽会に笑いがほしいと思い、川柳に着目しました。シルバー川柳の本の中から何句かお借りし、合唱団員も川柳を作って作曲。お客様に大うけで、大成功でした。今後も高齢者の集まりなどで再演したいと思います。第2弾を創作しても面白いと思っています」と話していました。 名古屋で開催された音楽会の来場者アンケートには、「(プログラムにあった12曲の中で)川柳の歌がとても面白かった」「(川柳の歌に)共感。身につまされることばかりで元気をもらった」といったコメントもあり、とても好評だったそうです。
動画も見られます!
上の写真をクリックしていただくと、音楽会の動画がご覧いただけます。この動画は応援チケットを購入した方しか見られないものですが、特別にご承諾をいただきました。転送や拡散はご遠慮ください。
歌うことも可能です!
こちらの曲を歌っていただくことも可能だそうです。「歌っていただけるのなら、創作者として最高の喜びです」と佐藤さん。
楽譜は1部500円。名古屋青年合唱団まで、お問合せください。
問/名古屋青年合唱団 ☎052(361)8645
想いを言葉に
名古屋青年合唱団 構成
石黒真知子 作詞
藤村記一郎 作曲
※「*」が川柳
①あの曲を聴くと心は20歳
秘めた思いも
思いは言葉にしないと 伝わりませんよ
言葉の速達もありますよ 「川柳~」
でももしも もしも言葉にしても
伝わらないときは うたってみよう!
〈スマホ着信音〉「もしもし」
*アルトでも電話の声はソプラノよ
「行きたくないなあ」
*休もうかなでも練習出てきて元気出た
*認知症あなたを忘れても歌は忘れない
歌は魔法使い 歌は魔法使い
大好きな歌で 元気になれる
沈んだ心も 軽くなる
胸のときめきを つれてくる
かじかむ指先 つつむように
歌は魔法使い
「あなたも もう魔法にかかっていますよ!」
*あの曲を聴くと心は20歳
②仏壇に今でも好きとチョコを置く
「○○さーん、○番受付までおいでくださーい」
*また病院ポイントあれば貯まるのに
(※河出書房新社「シルバー川柳」より)
「おじいちゃん」「え~?」
「○○してくださいね」「エ~?」
*年とって聞こえぬふりしてなにもせず
*仏壇に今でも好きとチョコを置く
(※河出書房新社「シルバー川柳」より)
通院友達がなげいた
自分がこんな年になるなんて
気持ちはまだまだ現役なのに
体が気持ちに追いつかない
腰が痛い 膝が痛い 耳が遠い よく忘れる
お出かけのパートナーは
気がつけばシルバーカー
「あなた、去年、肝臓の数値が悪かったでしょ?」
「もうほどほどにしたら!」
「だいじょうぶ!」
* 検診の3日前から酒を断ち
③一票が小さき者の紙つぶて
*独裁者に「青い空は」を聞かせたい
「大変遺憾に存じます」
*重く受け止めていますと軽く言う
*余震なお見えぬ核にもおびえつつ
ドラえもんは 21Cからやって来た
新世紀は輝やく未来になると
思っていたけれど
戦争のない未来に行ける
どこでもドアがあればいいな
この青い星に生まれた全ての人が
幸せになるレールがひかれて欲しい
「ユニセフ・アムネスティ・子ども食堂・ネットで署名
駅前のスタンディング・・・・」
自分ができることから 始めよう
自分ができることから 始めよう
声を上げることを 恐れないで
声を上げることを あきらめないで
*心まで変えられません武力では
*一票が小さき者の紙つぶて
④想いを言葉に
秘めた思いも
思いは言葉にしないと伝わりませんよ
言葉の速達もありますよ 「川柳~」
でももしも もしも言葉にしても伝わらないときは
うたってみよう!
シルバー川柳の人権教育での活用
2003年、岡山市教育委員会の目に止まり、シルバー川柳が中学生向けの人権教育の冊子『自分らしく生きる みんなのねがい』に活用されました。金子みすゞ、新川和江といった著名な詩人と共に、2頁にわたって15句の川柳が掲載されました。冊子は、高齢者や障害者、外国人などに対する理解を深めて偏見や差別を無くそうと、岡山市全体の中学2年生の保護者に配布。遠く離れた岡山市の子供たちが高齢者を理解するうえで、シルバー川柳が大きな役割を担うことができたのです。
冊子に掲載された句は次の通り じじの背を信じ切ってる孫寝顔(針生稔)/茶髪いや言った私も白髪染め(氏家さゆき)/老いの恋好きだと言わず目が語る(庄子義男)/おじいちゃんいつまで生きる孫が聞く(三浦 和)/妻リアル僕のロマンとすれ違い(渡辺芳夫)/老夫婦散歩に行くか愛言葉(氏家さゆき)/百歳へ挑むわたしの万歩計(佐藤喜一)/ときめきは老いも若きも無制限(吉田文子)/また会うぞ鏡の顔に元気でな(相原勝美)/忘れたととぼけ上手の処世術(浅野三夫)/長寿祝い過去形だけでほめられる(藤島勇雄)/ボケたまま長生きしてもいいですか(大平昭)/独り居に刻む時計の音さびし(大石敏子)/梅干しも婆にならなきゃ味が出ず(津久家重吉)/若き日の想い出のせて散る花火(笹原愛子) 敬称略
お年寄りのことを子供たちは、どのくらい理解してくれているのでしょう? 核家族化が進んで高齢者と接する機会が減っていることもあって心配になったりもしますが、この度、シルバー川柳が大きな役割を果たすこととなりました。
神奈川県での事例
神奈川県教育委員会が発行した
『人権学習ワークシート集
第17集(小・中学校編)』
神奈川県教育委員会が2023年3月に発行した小・中学校向けの『人権学習ワークシート集』において、たくさんの川柳が活用されました。ワークシートの狙いは
①「高齢者がどのような思いで日常生活を送っているのか、その思いに触れることで高齢者理解の心を育む」
②「高齢者がよりよい生活を送るために、自分にできることを考え取り組んでいこうとする態度を養う」こと。
シルバー川柳には高齢者の本音であったり、夢や希望などもユーモアを交えながら詠まれています。年齢が記載されていることから情景を思い浮かべやすいことも手伝って、子供たちが高齢者を理解するために効果的と判断されたようです。
高校生向けにも採用
同じく同教育委員会が昨年発行した高校向けの『人権学習ワークシート集』の【高齢者の理解】の項目においても、シルバー川柳が活用されています。このワークシートでは、掲載されている22句の川柳が次のどちらに当てはまるか考えることからスタート。①「身体的・心理的変化に関すること」、②「家族や周囲の人との関係に関すること」。次に最も興味を持った川柳を選んで、その理由も記入。選んだ作品の作者を想像し、必要な対応や言葉かけを考えてワークシートに記入。その内容をもとにグループで意見を交換しながら、高齢者がよりよい生活を送るためにどのような社会にしていけば良いかといったことを考える、という流れになっています。
今後、少子高齢化が一層進む中、支えていく年代と支えられる年代との相互理解はより不可欠となります。席を譲ってくれたり、高齢者の思いに寄り添ってくれる優しい子供たちが、増えてくれるといいですね。
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卒業論文のテーマに「シルバー川柳」
2017年、小紙編集室に来られて過去10年分以上の膨大な紙面を写真撮影するなどして持ち帰られたのは、東北大学文学部に所属していた谷澤穂南さん。大学では宗教学研究室に所属し、『死生学(※)』に関心を抱く中で卒論のテーマに選んだのが、シルバー川柳。高齢者の詠んだ川柳には、亡き人への思いなど死を題材にしたものも少なくないことから、研究対象に選ぶことにしたそうです。膨大な数の作品を読み込んで分析を進める一方、6人の投稿者のお宅を訪問。川柳を始めたきっかけや川柳への思い、エピソードなどの聞き取り調査も行われました。最も大変だったことは、10年分以上の川柳を分類する作業。どう分けるかということに悩んだ末、大きな分類として『死までの道のり』『死に際する具体的な活動』『他者の死』の3つのカテゴリーを設け、さらに細かい分類として『死の実感』『遺すもの』『前向きな心情』『悲哀・未練・後悔』等々16項目を設定。それぞれに該当する作品を分類。そこから読み取れたことが論文に記されています。一連の作業を一人だけで行うと自身の主観的な印象だけになってしまうため、同じ学部の友人2人にも手伝ってもらったそうです。論文は「高齢者の間で特に愛されているシルバー川柳だが、中学生向けの人権教育冊子に掲載された例のように、高齢者の生活や人生、死生観などについて他の世代が学ぶ身近な教材としての活用も、今後期待されるところである」と結ばれていました。
(※)死生学…人は死に対してどう思っているのかを学び、それを通して逆に生についてどう思っているのかを学ぶこと。
メディアでの紹介事例
NHK「クローズアップ現代」「あしたも晴れ人生レシピ」「ごごナマ」「みちたん」
他にも多数のメディアに取り上げられています。
作品の紹介
創刊10周年の記念企画における「大賞・秀作」「お題ごとの秀作」をご紹介(2006年頃までの作品から)
※新しい作品はバックナンバーでご覧いただけます。
大賞
冗談に 値切って無駄を 買わされる
酒井与作(69)
【評】誰しもがこんな日常経験を持っているかもしれない。適切な「てにをは」の使い方が句をキチンと生かしている。
物忘れ するが晩酌 忘れない
佐藤庄助
【評】一読句意明快。ずばり核心を剔出(てきしゅつ)して揺るぎがない。作者名も酒好きにピッタリだなんて。
紫陽花に 電動ベッド 上下する
糸井綾子(76)
【評】梅雨の晴れ間のひととき、退屈な病窓から七変化の揺れが慰めを運んでくれる。電動ベッドを操作する、か細い指。心理を巧みに捉えた現代川柳。
寅さんの 顔が出そうな 朝の市
佐藤政弘(80)
【評】特定の日に賑わう朝市。土地の名産が客たちの足を止める。国訛りの会話がはずむ一角に寅さんらしい顔も。寅さんの上手な引用。
悲しいね プラスチックの 鏡もち
千葉敬子(81)
【評】昔ながらの伝統風習にも時代の移り変わりが。会話調の表現が、作者の嘆きを伝えてあますところがない。時代相の痛烈な風刺。
秀作
人生は 見えない段差 多すぎる
田林豊治郎(89)
老眼鏡 磨いて訃報 確かめる
大友球人(82)
朝ドラに 涙流して 鍋焦がし
鈴木千代(73)
いい湯だな みんなそれぞれ 薬出す
冨成久江(80)
まだ生きて いるかと年金 調書くる
富樫辰夫(75)
満月と 同じ顔した 孫可愛
丹野典子(60)
七人の 孫より怖い 妻一人
菅野宏司(72)
家族から 戦力外と 冷たい目
高沢照夫(78)
物忘れ このまま全部 忘れたい
矢野伸子(77)
今日もまた 花マル付ける 介護の記
中村多美子(67)
あの世から 病に勝って Uターン
及川英夫(66)
美男子の 兄もガ島で 散りました
高橋キヨ子(81)
畑仕事 時々立って イナバウァー
佐藤 勉(76)
母の歳 越え初めての 一人旅
菅原えい(80)
M5より 揺れが大きい リフォーム代
小澤政幸(81)
定年と 知らない靴が 手入れ待ち
山口省三 (71)
ポストまで 迎えに来てる 墓地チラシ
菅野 芳(72)
何流か 障子を足で 開ける妻
相原勝美(82)
お題「孫」
柔軟と ガンコがぶつかり 孫の勝
加茂英雄(72)
孫来りゃ 爺婆喧嘩 どこえやら
大村弘幸(63)
曾孫から 年玉もらい 目玉ぬれ
大村武子(74)
孫がくる やるかもらうか お年玉
大村昴星(77)
孫の声 リハビリ痛さ 忘れ聞く
山田悦子(64)
禁煙を 煙草値上げで 孫命じ
高沢照夫(80)
孫が来る 整骨院にて 腰鍛え
佐藤 晃(75)
トランプで 孫より強い 声を出し
伊藤勇子(67)
合格に 隠れた爺の 守り札
小澤政幸(79)
家守る 息子も孫も みな家出
冨成久江(78)
孫便り 読み終えすする 冷めたお茶
山田悦子(64)
旗色が 悪いと孫を 味方にし
小白正敏(72)
オレオレと 見えない孫は 巧妙に
宍戸雄三郎(73)
孫と来て 赤信号は 渡れない
大塚光太(77)
膳囲み 孫の一言 初笑い
大泉昭一
孫を産む 嫁へ年玉 はずむ祖父
大泉みつ子(68)
映る電話 ひ孫の笑顔 寿命伸び
庄子衛子(85)
通信簿 見れば財布の 紐緩む
会田昭夫(75)
耳遠い 孫との内緒 家族知り
大村昴星(77)
初孫に 爺様取られて 婆嫉妬
大場貞助(77)
おれおれに 暗号決めた 爺と孫
小澤政幸(79)
孫たちに 教えるつもり 教えられ
伊藤 弘(66)
つきっきり 孫に教わり メール打つ
森本淳子(74)
ベッタリが サラリに変わり 孫成人
渡辺セキ子(75)
老夫婦 孫に学んで 大笑い
高橋満博(68)
年金の おかげで 孫が肩たたく
村主利夫(67)
通信簿 満点取って 孫来たり
千川原昭六(72)
孫が来て 古い話に 戸を閉める
会田昭夫(75)
肩車 飽きた孫に 今感謝
山田正志(68)
手をつなぐ 孫の手の位置 高くなり
石森朝子(73)
孫増えて 年玉増えて 夢も増え
亀卦川篤(82)
朝風呂を 孫に教えて いいものか
大村國雄(84)
減る年金 孫に言い訳 しなければ
千田幸子(74)
銀行の 待つ間しのぎに 孫を連れ
佐藤由紀子(75)
お題「嫁 姑」
老眼鏡 かけてはっきり 嫁の粗
菅野宏司(72)
うなぎ食べ 嫁より先に 死ぬものか
丹野典子(60)
嫁姑 鍛えられたし この辛抱
菅原文代(63)
嫁姑 プライバシーは 守られず
鬼怒川勢子(70)
嫁の学 家庭を守り 愚痴も出る
大泉みつ子(68)
姑の 句読点無い 愚痴小言
大場 敬(65)
物忘れ 許し合っての 嫁姑
白井貞子(85)
嫁姑 教科書にない 看取り学
峯浦よし子
鬼嫁は 今は仏の 介護娘に
大村禮二郎(77)
嫁料理 老夫婦毎日 楽しませ
黒川きゑ(74)
お題「夫 婦」
亡き妻と 一緒ならばと 想う旅
正木三路(84)
物忘れ 妻の叱咤で 思い出し
江刺雄治郎(75)
ボケの気を 妻の前では 見せぬ我
石川胞寿(73)
ケーキより 夫婦でつつく 誕生鍋
大泉みつ子(68)
喧嘩して 気づけば二人 お茶すすり
岡田永子(62)
はいチョコよ 夫に贈り 妻が食べ
丹野典子(60)
ありがとう 妻に云えぬに よそで云い
千田幸子(72)
怒る妻 亡き母そっくり 何時覚え
佐藤兵太郎(72)
亡夫の靴 邪魔になるけど 捨てられぬ
岐部栄子(81)
時効など 認めぬ妻の 記憶力
江刺雄治郎(77)
古ぼけた 亡夫の表札 守り神
大場貞助(78)
今日も妻 明日が知れぬと 温泉へ
鈴木紀子(65)
亡き夫へ メール打ちます 夢に出て
佐藤昌子(65)
古日記 妻と過去を 喋る夜
黒川平司(80)
愛してる 問えば老妻 頬を染め
山田悦子(64)
夫看取り 我が身病めるを 忘れがち
糸井綾子(77)
お題「ぼやき」
早起きは「三文」どころか 邪魔にされ
曽良みや子(82)
児童より 親を教育 したい国
庄子謙市(80)
通帳の シミかよ何と 預金利子
大平 昭(74)
五十代 六十代は 夢と去り
千川原昭六(72)
地図を買い 行ったつもりの 世界旅
佐藤昌敏(67)
どら息子 無心の時だけ 真人間
高橋 榮(76)
曾孫八 名を呼ぶ毎に 注意され
前田河とみ(97)
豊作も 不作も困る 変な国
大塚光太(77)
今日もまた 言葉飲み込み 腹が張る
笠原京子(72)
白黒の ネクタイで足りる 定年後
江刺雄治郎(75)
必要な 意地は捨てずに 居た時も
菅野美春(75)
改革は 老のふところ 狙いうち
中村多美子(67)
アンケート 六十までと 除外され
糸井綾子(75)
孫たちと カラオケしたが マイク来ず
伊藤 弘(66)
晩酌の おかずは孫の 食べ残し
高沢照夫(78)
パソコンに 頭を入れて のぞきたい
佐々木隆雄(66)
尽くしても 介護の頃は ソッポ向き
大場 敬(66)
あの世へと 老いの背を押す 増税が
那須武志(75)
形見分け 昔宝で 今粗大
菅原文代(64)
頭だけ 働く祖母は 煩がれ
黒川きゑ(75)
酒禁止 ワイングラスで 水を飲む
伊藤勇子(68)
コンビニは 包丁いらぬ 人増やし
糸井綾子(77)
バスの中 大きな鏡 ニュート出し
吉江弘敏(78)
年とると 過去が多くて 先き見えぬ
峯浦よし子(83)
味噌醤油 貸し借り消えた 隣り組
大場 敬(66)
久々ね 訪ねし故郷は 知らぬ街
紺野浩子(66)
お題「年 金」
片麻痺を 年金介護が 守り抜く
小原信仰(79)
ダイエット やめて下さい 年金様
笠原京子(72)
私のは 年金でなく 年銅か 日本平
石森朝子(71)
年金も 百円ショップで 満たす日々
氏家さゆき(75)
穏やかな 老後を夢見た 駄目だった
矢野伸子(77)
思いっきり 良妻気取る 年金日
庄子衛子(84)
年金の 中から貯金 苦労性
高倉公子(86)
ボーナスの 記事に年金 目をそらし
小林時春(70)
年金で やりくりするのが ボケ防止
永松江津子(81)
ボケ進む 年金の日は 忘れずに
大堀ハル(92)
年金が 孫の笑顔と なりにけり
鎌田やすの(73)
無年金 食事のたびに 愚痴言われ
高沢照夫(78)
年金を 貰うお陰で もてる老父
高橋巳津夫(75)
銀行は 年金だけの 縁となり
庄子謙市(82)
お題「物忘れ」
愛嬌と ごまかしきれぬ 物忘れ
佐藤由紀子(72)
天使のよう 母の晩年 認知症
豊田真次(63)
失った 脳細胞を 学び埋め
古田正吉
惚けじゃない 老にもあるの 反抗期
大平 昭(74)
逃げ足の 早い記憶の 影薄れ
菅野 芳(70)
喜寿が来る 物忘れなど 負けられぬ
大村禮二郎(76)
メモをした それをどこかに置き忘れ
中村多美子(68)
ハガキ持ち ポストの前を 通り過ぎ
鬼怒川勢子(70)
物忘れ するから妻は まるく見え
谷井啓路(72)
ファスナーを 閉め忘れして 妻の声
笹出左村(74)
物忘れ 防ぐ手だてと 記録魔に
渡辺セキ子(76)
今日も又 何か忘れて 頑張るぞ
高橋スマノ(77)
物忘れ 遂には他人を 疑って
後藤掃雲(79)
物忘れ 年寄り笑うな 歩む道
小野隆夫(81)
人生に 忘れがあるから 救われる
高橋イツコ(92)
歯を磨き 差し歯忘れて カラオケへ
大友寛子(68)
若人の 物忘れ見て ホッとする
石森朝子(71)
届け物 渡したはずが 家に有り
佐々木弘子(61)
白寿でも 忘れないのは 厚化粧
伊勢武子(70)
老夫婦 足した記憶で 一人分
戸田 信(72)
呆けと呆け 意気投合し 呆けの花
石森孝義(67)
勘違い しないと言い張る 老二人
小原信仰(79)
思い出す 力も失せた 歳となり
郷家 榮(73)
物忘れ 何回しても 罪はない
峯浦よし子(83)
ボケ比べ 今日は家内が 勝ったよう
大平 昭(74)
お題「療養・介護・病・衰え」
外出着 病院行きの おしゃれです
千葉敬子(80)
免許証 更新絶たれた 視力減
小澤政幸(81)
胃一杯 クスリ詰め込み 病み消えず
大村ゆき子(80)
退院日 迎いの妻が 光って見え
植野静夫(81)
糖尿病 受け継ぐなよと 祈る日々
加藤昌一(73)
つまみ食い 正直過ぎる 血糖値
大場 敬(66)
介護の手 時に冷たく 温かく
中村多美子(67)
疲れたな 鏡の中の 皺の群れ
土谷信一郎(64)
老いの友 話し通ぜず 長電話
福井ヨノ(77)
成長を 見守った子に 看守られ
富樫辰夫(70)
点滴で ねばり死に神 引き取らせ
渡辺セキ子(75)
血圧の 記録で埋める 日記帳
三浦 和(76)
錠剤で 傷む身守る 古稀の坂
吉田征四郎(65)
何処の人 話がはずむ 診療所
清野輝夫(76)
リハビリで 曲がったヘソも治します
藤島勇雄(82)
医者通い これも一つの ボケ防止
小川恒治(93)
白内障 治って人生 もう十年
奈良正八(90)
デイサービス 傘寿は子供 白寿いる
小原信仰(80)
病が友 薬がデザート 日課とす
村上新吉(68)
病床で 待ちどおしきは 妻の音
高橋 猛(64)
病める時 誓った愛を 呼び起こす
戸田トモ(74)
病みぬけて 生命の重さ よく解かり
高橋冨美子
大雪を 見守るだけの 病の身
堀江良彦(64)
病床の 母の強気 今いずこ
鬼怒川勢子(71)
病友会 名づけて今も 旅仲間
小野すえ子(78)
楽天を 病も忘れ 応援す
高橋スマノ(78)
退院日 温もり詰めて 妻運転
山田悦子(64)
紅さして 退院の日に 彩を添え
遠藤ひでこ(68)
もう一度 恋の病を 試したい
鈴木 實(71)
病とは 長生き支える 安全弁
小野秀男(85)
前を行く 妻の背中で 病い避け
大村示豊
妻いても ヘルパーさんに 介護され
吉田征四郎(66)
新人の 医師を診察 老患者
戸田 信(73)
親ゆずり 私の持病は 宝物
林 教子(63)
今日も駄目 夫逝きし院 息苦し
高橋知杏(75)
長生きも ちょっぴり遠慮す 子供等に
前田河とみ(98)
いい方へいい方へ言う 医者が好き
酒井与作(69)
病人は 薬のためと 飯を食う
小赤沢ツヤ子(70)
年老いて ついて来るのは 病だけ
安住きい子(75)
痛い足 痛い注射も 我慢する
岐部栄子(82)
お題「夏」
若返る 色あざやかな 夏帽子
梁川正三(74)
麻蚊帳に 蛍放した 夏恋し
渡辺セキ子(76)
きのこ雲 忘れてならぬ 修羅の街
後藤掃雲(79)
外地にて 聞きし玉音 夏の雲
小澤政幸(79)
終戦日 老兵無口に なるばかり
大友球人(81)
夏痩せで もしや癌かと 気があせる
岐部栄子(80)
夏祭り 渡り歩いて いい余生
高澤千恵子(64)
仙台空襲 田舎で見てた 夏の夜
柴田 實(70)
スイトンが ご馳走だった 終戦日
庄子謙市(81)
夏休み 孫台風が 居座りし
大塚光太(78)
亡き父母を クーラーの部屋に 招きたし
永松江津子(81)
夏休み 孫よ早よ来い 早よ帰れ
大石大介(78)
お題「五 輪」
次期五輪 元気で待とう トレーニング
石川胞寿(74)
日の丸に 君が代のると グッと来る
富樫辰夫(76)
口だけは 五輪級の 俺の友
鈴木 實(70)
老々も 五輪の夜は 熱く燃え
後藤予し子(67)
嫁姑 料理の争い 家五輪
大村武子(73)
五輪過ぎ 我に返った 寂しさや
千川原昭六(72)
五輪より 七輪欲しいと 卒寿婆々
大石大介(78)
私には 誰がくれるか 金メダル
高橋満博(69)
お題「命」
余命表 延びて天国 過疎となり
東海四四二(90)
命日に 見合いしてよと 夢に妻
及川英夫(66)
子に孫に 継がれる命 ありがたし
森本淳子(75)
僅かでも 遺言書くか 恥かくか
那須武志(75)
命受け 何か恩返し せにゃならん
冨成久江(79)
命がけ 恋した乙女 介護する
後藤掃雲(79)
おばあちゃん 死んだことあると まじめ顔
菅原文代(63)
物欲が 失せて命の 賞味知る
南 雅子(65)
老いたとて 命燃やせる こと尽きぬ
高橋亮平(68)
友急死 星になっても クラス会
土谷信一郎(64)
モスモスの 東北なまり 天国に
栗原浅子(80)
天国に 辿り着くまで 妻の愛
吉田征四郎(66)
今の世の 命の軽さ 誰に問う
後藤予し子(67)
命ある 限り働く 自営業
柴田 實(70)
天国に 賑やかなのが 一人増え
戸田 信(72)
勲章と 命を交換 した昔
庄子謙市(82)
白旗に 命拾われ 生還し
佐藤春男(82)
二度とない 命だゆっくり すると決め
田林豊治郎(89)
夫逝きて 命あずける 人も無き
小赤沢ツヤ子
病む妻に 長生せねば 誓わせる
石川胞寿(74)
引きかえに 代われる命 持てるなら
菅野美春(76)
お薬に 飽きたよ僕は 終わりかな
高森雅彦(83)
お題「店」
町内の ニュースソースは あの店さ
鈴木 實(71)
ふるさとの 馴染みし書店 駐車場
佐藤とし子(70)
模擬店で わらべにかえる 老女たち
伊藤勇子(67)
万歩計 付けて安店 はしごする
氏家さゆき(76)
大型店 看板ばあちゃん 消しちゃった
冨成久江(79)
老舗ゆえ 心を癒す 味があり
小澤政幸(79)
立ち読みで 稼いだお金 なんぼでしょ
渡辺芳夫(81)
立ち話 できたお店が また消えた
高橋亮平(68)
店名は 知らない地理の 道しるべ
吉田征四郎(66)
年金に 合わせたような 売出日
千田幸子(72)
老人を とり残したる 郊外店
島田淑子(73)
秤り売り した年代を 懐かしみ
内海と志(88)
こんどこそ 本当らしい 店仕舞い
東海四四二(90)
今の世に 人を信じる 無人店
星 三男(72)
家事・育児 人生相談 店の中
大石大介(79)
リストラは 無い店の孫 ノンビリと
佐藤口子(70)
兄弟の ようなお店は 無くなった
矢野伸子(77)
スーパーに 運動目的 物買わず
小林吉平(84)
お題「車」
車椅子 生き甲斐湧いて 欠かせない
高橋時雄(95)
冬野菜 満載にして 友が来た
鬼怒川勢子(71)
買ってもよ 何年乗れるか 指を折り
那須武志(75)
シルバーマーク 外して双葉 孫発車
渡辺セキ子(76)
プライドを 捨てて免許を 返上し
小野隆夫(81)
ハンドルを 孫にまかせて 気もそぞろ
大友勘吉(68)
がんこ者 生きる車線 変えぬまま
鈴木 實(71)
免許証 車やめても 身分証
小林 敏(75)
お付き合い さりげなくおく 車間距離
三浦 和(77)
80歳 座席を譲る 気持ち良さ
吉江弘敏(77)
八十五春 免許更新 心ゆれ
小野秀男(84)
タクシーに 乗ったつもりの 義援金
後藤予し子(67)
孫新車 食費払いは 祖母が受け
大泉昭一(70)
天国も 地獄も知って 車椅子
伊勢武子(71)
カーで来て ルームランナーで汗流す
戸田 信(72)
杖を見て 寄るタクシーに 目をそらす
小笠原登美子(76)
夫逝きて 廃車にする日 胸傷む
岡本静子(80)
年を取り タクシー代が どっと増え
永松江津子(81)
火の車 真っ最中で 子は育ち
高橋キヨ子(81)
お隣の 路上駐車で まずくなり
白井貞子(86)
押車 無くてはならない 伴侶です
内海と志(88)
廃車して 若さと健康 手に入り
大石大介(79)
お題「異 国」
怖かった 戦後日本の 異国人
高橋哲彌(77)
招集時 外地と聞いて 覚悟決め
小澤政幸(80)
北満に 我が青春を 埋めて来た
手塚 廣(83)
正月飾り メイドインチャイナ 外国製
南 雅子(65)
日本どこ 異国文化の 食ばかり
鈴木 實(71)
戦友会 「異国の丘」で お開きに
小林吉平(84)
クリスマス 異国に散った 兄想う
佐藤信子(85)
骨も無く 異国に散りし 父悲し
豊田真次(62)
コアラ抱き 笑顔の一枚 もう行けぬ
半澤百子(75)
お題「艶・若さ」
ときめきが 健康長寿の ビタミン剤
丹野典子(60)
検査技師 若さに恥じらう 老患者
鈴木紀子(64)
髪染めて 若さを競う 同級会
大場 敬(66)
芸能祭 老妻の踊りに 惚れなおし
大場貞助(78)
初恋の 人と出会った 墓地ツアー
高沢照夫(79)
早老と 云われてならぬ 身だしなみ
佐藤 晃(75)
放浪の旅 老人パスで 今日は西
菅野 芳(72)
シクラメン 鉢替え我と 生き返る
嶋貫万栄子(71)
元気薬 市が交付する 敬老パス
村上新吉(69)
若いのネ 云われて今朝も トレパンに
佐藤 晃(75)
白黒の アルバム眺めて 若返る
田林豊治郎(93)
老いたとて 田畑に出れば 背筋のび
村主利夫(66)
職退いて 予定はみ出す 稽古事
大場 敬(65)
老の身に 男らしさが 邪魔になり
会田昭夫(75)
今日も又 出たきり老人 何処へ行く
石森顕一(72)
お題「鍛える」
ボデービル する気になった 過去の夢
谷井啓路(72)
幸運は 何を鍛えりゃ 来るんだろう
大石大介(78)
孫三歳 婆さん毎日 鍛えられ
兎原健夫(69)
独り居は 心を鍛え 前向きに
森本淳子(74)
羨まし 喜寿でラケット 握る人
小原清子(66)
老人は 転ばぬ事が 国のため
植野静夫(80)
シニア向け ドリルも出来た 長寿国
千田幸子(72)
忍耐心 夫の介護で 鍛えられ
小笠原登美子(75)
バーゲンは 老も並ばせ 足鍛え
佐藤 勉(76)
お題「保 険」
ボケ防止 生保レディーと 禅問答
林 忠夫(67)
予定より 長生きし過ぎ 保険なし
伊藤勇子(68)
給付金 付いたといって 入院す
鬼怒川勢子(71)
毎日の 計算ドリル 脳保険
貝沼このえ(71)
入りたい 今は保険に 逃げられる
矢野伸子(77)
保険金 多額になると 殺される
西宮トキエ(80)
もらい火に 火災保険が 神に見え
高橋キヨ子(81)
保険より 老妻の元気が 嬉しいな
梁川正三(75)
補償なら 妻の心に 自己保険
会田昭夫(76)
保険かけ 迎え待ってる 独居老人
曽良みや子(82)
お題「始める」
子と孫に 禁煙始める 誓いさせ
今野昭夫(77)
家づくり 始めて気づく 親の恩
濱屋勇蔵(68)
戦時中 禁止の英語 始めたり
安倍繁子(75)
誕生日 又また始まる もう一年
須藤好敏(77)
祈るだけ 夫の手術の 始まりぬ
古田正吉(80)
ステッキを 手に取り老いを 始めけり
亀卦川篤(81)
孫しかり 始める我も 涙落ち
堀江ふみ (85)
肩の荷を 下ろして趣味の 扉開け
千葉きよ子(61)
お題「種」
種まいて なんだか一人 うれしけり
堀江良彦(64)
発芽待つ 夫の庭下駄 新しく
鬼怒川勢子(71)
露天湯で 話の種の 尽きぬこと
小原清子(67)
種かじる 昔もあった 総入れ歯
遠藤ひでこ(68)
長生きの 種を蒔くのは 優し孫
大村禮二郎(77)
八十路坂 迷いの種を うめに行く
佐藤信子(85)
種を蒔く 大地は嘘を つかぬから
酒井与作(69)
リハビリに 元気と笑顔の 種貰う
佐藤 晃(73)
幸せの花 苦労の種で 咲き誇る
高橋邦子(58)
お題「映画・ドラマ」
メロドラマ 爺んつぁん静かに 席外し
伊藤英哉(71)
お父さん 私のドラマ 忘れてる
松田高子(68)
古希迎え 残るドラマは 一つだけ
兎原健夫(70)
おニュー着て 父母と気どった 映画館
鬼怒川勢子(71)
わが家では 毎日がドラマ 孫主役
多田嘉雄(73)
恍惚の ドラマの主演 かって出る
富樫辰夫(77)
映画館 初めて見たのは 弁士付
西宮トキエ(80)
ドラマ前 孫の早寝を 仕事にし
山田悦子(64)
アランドロン 私のヨン様 もう一度
南 雅子(66)
夢の中 今も「裕ちゃん」 格好良い
小原清子(67)
兄と観た チャプリン映画 忘られず
石森朝子(72)
ドラマかな 還暦過ぎて 癌告知
吉田征四郎(67)
古き友(彼女)句会で再会 ドラマの様
加茂英雄(72)
夫逝って すべて美くし ドラマです
山岡京子(71)
お題「揺れる」
幼子の 手花火の玉 ゆれ落ちて
伊藤ひで(71)
肉の前 ラベルに心 揺れてます
高橋キヨ子(81)
多国籍 揺れる大和の 力士像
新野三郎(66)
金華山 船から下りても ゆらゆらと
兎原健夫(70)
嫁姑 やじろべえ役の 孫がいる
貝沼このえ(71)
揺れ動く 気持おさえて 店を閉じ
那須武志(76)
俺のファン 巨人楽天 揺れ動く
今野昭夫(77)
兄弟が 父の遺産で 揺れ動く
高橋哲彌(77)
思い切り 身体揺らして 歌う孫
矢野伸子(78)
亡夫から 一喝欲しい 迷い事
菅原えい(80)
嬉しさに 財布フラフラ 孫笑顔
大泉みつ子(70)
人間に なろうと揺れる 反抗期
酒井与作(69)
青春は 特攻基地で 帽を振り
高沢照夫(79)
衣替え 二の腕揺れる 憎らしさ
伊勢武子(71)
親切に 心が揺れて 老いの恋
峯浦耘蔵(82)
お題「継 ぐ」
所詮無理 継ぎ当て知らぬ 子と同居
中川由紀子(63)
家継ぎを 否と言う我 涙ぐむ
堀江良彦(64)
姑の 漬け物石を 嫁が継ぎ
村主利夫(67)
生きた星 子孫へ引き継ぐ 人間の義務
庄子勝子(63)
相続は 嫁の知恵で ねじ曲がり
兎原健夫(70)
農継げと 胸張り言えぬ 世なりけり
佐藤とし子(71)
平成は 書くしかないか 遺言書
須藤好敏(78)
継ぐものも 継がせるものも ない平和
後藤掃雲(80)
家継ぐか 嫁に行くかで まだ独り
古田正吉(80)
仕方なく 継いだ財産 山と谷 西
小林吉平(84)
トーン低く 家業継ぐ兄 暇と言う
後藤予し子(68)
今時は 資産を継いでも 親は見ず
伊勢武子(71)
大学を 出たら後継ぎ 反古にされ
大場 敬(67)
相続は 継ぐも別れも 紙一重
峯浦耘蔵(82)
形見分け 姉の来ぬ間に 荷をまとめ
境 弘(83)
父危篤 それより遺産 気にかかり
大塚光太(79)
お題「価 格」
妻の供 ただ価格のみ 見て歩く
須藤好敏(78)
物価高 貯金の目減り 気が病める
高橋イツコ(93)
気がつけば 夫婦の会話 値段だけ
山口省三 (71)
ウン十年 価格据え置き 主婦労働
貝沼このえ(71)
価格表 眺めただけで 満腹感
宇南山礼子(73)
価値観の 違う孫らに 腹を立て
阿部麗子(74)
ひと月でいい 価格気にせず 過ごしたい
安倍繁子(76)
病気して 医療の高値に 目がくらみ
西宮トキエ(80)
愛情は いくら出しても 買えないの
後藤掃雲(80)
それなりの 価格で光る 骨董品
大友球人(82)
少し褒め 価格も褒めて 値下げさせ
熊谷くに(83)
食欲が 価格蹴飛ばす 秋が来た
鈴木 實(71)
買いたいが 高くて買えない 国産品
今野二男(66)
安物買い 口笛吹いて 帰る俺
吉田征四郎(67)
あの世行き 葬儀価格に 怖じ気づき
後藤予し子(68)
人の価値 退職金で 計れない
林 忠夫(67)
世辞が飛ぶ 高い価格の 宝石店
山岡京子(71)
一円の 安いチラシに 無料バス
大塚光太(79)
昔話 価格の単位 忘れてる
白井貞子(87)
ガソリン高騰 免許返納 思案する
加藤いさお(74)
葬式も 上中下の 価格知り
高沢照夫(79)
祈祷料 特上並に はて迷う
郷家 榮(74)
意味不明 「感謝祭」での 値札替え
高森雅彦(83)
安もの買い 知らず知らずにゴミの山
峯浦よし子(84)
お題「磨 く」
爺あたま 磨き柱と ツヤ勝負
塩野谷明夫(62)
七五三 孫より老妻 磨き入れ
那須武志(76)
ピカピカに 磨いた靴の 出番ない
千葉きよ子(61)
老いてなお 磨きし声の 艶やかさ
昆 ミサ(69)
墓石を 磨く両手に 見える母
及川英夫(67)
磨かれた 人に接して 我を知り
佐々木隆雄(68)
歳老いば 磨きたくとも 自歯は無し
佐藤良子(68)
磨きかけ 眺める鏡 うらめしい
濱屋勇藏(69)
鍋磨く 遠き日の母 ふと思う
佐藤とし子(71)
大口で 笑ったあとの 顔のつや
鬼怒川勢子(72)
年かさね 心磨いた 顔になり
伊藤ひで(74)
色気あり 毎朝磨く ハゲ頭
高橋哲彌(77)
墓磨き さっぱりしたねと 語りかけ
冨成久江(80)
初孫の 磨きせり合う 爺と婆
小澤政幸(81)
光頭会 老いの美学を 競い合う
小野隆夫(82)
鐘磨き 心さわやか 読経上げ
弓田利男(82)
バック磨き 世話にナッタナァ礼を言う
庄子衛子(85)
年毎に 磨きがかかる 老いの愚痴
高橋亮平(69)
床磨き 今じゃ昔の 物語
石森朝子(73)
この歳じゃ 何を磨くも 遅すぎた
中村佐江子(76)
禿頭 蠅も止まらぬ ほど磨く
吉江弘敏(78)
人生は 心磨いて 孫に継ぐ
佐々木弘子(62)
野の花も 磨いた墓石に よく似合う
吉田征四郎(67)
女房に 強く磨かれ 角が取れ
上杉義弘(73)
妻病みて 磨いたあちこち 艶が去り
佐藤六雄(84)
ガラス窓 磨き幸せ 呼び入れる
佐藤信子(85)
老いてなお ときめきたいの 厚化粧
林 忠夫(67)
禿頭 磨かなくても 光ります
大塚光太(79)
ご先祖を 磨く息子に 感謝する
高橋キヨ子(82)
働いて 曲がった背中 光ってる
白井貞子(87)
お題「家 計」
家計簿を 防衛しても 孫に負け
大友寛子(69)
あと三日 思わぬ訃報で 大赤字
安倍繁子(76)
財布だけ 痩せて終わった ダイエット
曽良みや子(82)
自衛策 金のかからぬ 趣味を持ち
貝沼このえ(72)
家計簿は 墨で書いても 赤字です
富樫辰夫(77)
家計簿に 毎月顔出す 宝くじ
高橋哲彌(77)
孫名義に 手を付けようか 火の車
菅原えい(81)
ボケ防止 日々の暮らしの やりくりか
千葉千代(83)
倹約が 身に付きすぎて 味気ない
高倉公子(88)
年金が 大黒柱の 高齢者
丹野典子(62)
灯油高 寝てたどんぶく 出番待つ
菅原文代(65)
医療費を 払って血圧 上昇し
遠藤英子(68)
我が家計 詐欺が入れる 隙はない
高橋亮平(69)
家計簿に スーパーめぐりを 指示される
鈴木 實(72)
家計簿を 嫁に渡して 皺が伸び
鈴木千代(73)
ワンランク 下げて我が家の味にする
千葉きよ子(61)
懐かしい 苦にしなかった 火の車
高橋知杏(76)
目出度さが 重なりへそくり 顔を出す
半澤百子(76)
腹減った 子供の時代で 今長寿
峰浦耘蔵(82)
亡き妻の 苦労が語る 出納簿
高森雅彦(84)
お題「盗 る」
爺様に 心盗られて 五十年
菅原 薫(66)
盗っ人も 避ける八十路の 下着かな
小野すえ子(78)
盗らんでも 言えばあげたよ 菊の鉢
加藤いさお(75)
老いてなお 女の心を 盗る気持
堀江良彦(64)
盗み聞き 孫に合わせて 知った振り
伊藤 弘(68)
陣盗りの 遊びも知らぬ 現代っ子
伊藤ひで(74)
電化品 盗るどころか 捨てて行く
那須武志(76)
五十五年 盗みし人と 共に生き
安倍繁子(76)
戸締まりを しないで寝た世 もう来ない
高橋スマノ(78)
センサーの 眼より鋭い 爺の勘
小澤政幸(81)
人が来て 逃げるコソ泥 なら許す
菅原えい(81)
今までの 立ち読み本代 なんぼでしょ
渡辺芳夫(82)
病み盗れば クスリおまけに プレゼント
佐藤かね子(74)
我が病 盗んでくれる 神はいぬ
大村武子(75)
若い子の 化粧盗っても ババは婆
佐藤良子(69)
戦場は 盗るもの無くて 飢餓と弾
峯浦耘蔵(82)
お題「伝える」
世話女房 伝わりすぎて 苦労する
小松政治(69)
伝えたい たった一言 ありがとう
小野淳子(79)
聞くことが できなくなった 母の味
阿部麗子(74)
元旦や 子等に伝える 我が家系
古田正吉
子々孫々 平和な世界 伝えたい
庄子勝子(64)
孫たちに 戦後の生活 伝わらず
伊藤 弘(68)
忘れまい 敵機が飛んだ あの頃を
兎原健夫(70)
以心伝心 この頃とんと 通じない
富樫辰夫(77)
アルバムを 開けば伝わる 母の愛
宇南山礼子(74)
孫たちに 平和伝えて 年越そばを食う
多田嘉雄(75)
子や孫に 伝えたいこと 人の道
小野すえ子(78)
伝えます… 電話の用件 忘れたな
冨成久江(80)
手拍子で 「さんさ時雨」を祖母伝え
小野隆夫(83)
伝えたい 息子の好きな 母の味
後藤予し子(68)
核家族 伝えることも ままならず
菱沼みつ子(76)
正月の 凧揚げ羽根突き 絵本だけ
半澤百子(76)
ダシ取りを 嫁に伝えて 年を越す
丹野みつえ(79)
この味を 伝えたいけど 嫁いない
白井貞子(87)
電話受け 伝い忘れて 知らん顔
内海と志(89)
巣立ち行く 孫に伝える 老の夢
鎌田やすの(75)
お題「家」
一番は 家の明るさ にぎやかさ
中嶋小夜子(62)
里帰り 迎える亡父母の あの笑顔
石田ミズエ(74)
無理せずに 建てて良かった 家賃ゼロ
菊地昭治(77)
子育てを 終えて我が家は ポチとタマ
大平か志く(92)
家を出た 就職列車 思い出す
堀江良彦(64)
病める床 死は我が家でと 帰る義父
鈴木紀子(66)
家だけが 老いたる夫婦 よりどころ
濱屋勇蔵(69)
家という 重石はずれ 核家族
佐藤とし子(72)
古家でも 想い出沁みて 壊せない
那須武志(76)
ようやった ぐうたら息子の 家見舞
高橋哲彌(78)
四つ割の リンゴで育った 大家族
菅原えい(81)
マイホーム 個室に明かり 居間暗し
丹野典子(63)
古くとも 家族の笑いが ひびく家
菅原文代(65)
新婚は 風呂もトイレも 外でした
遠藤英子(69)
勝ち負けが 諸に出ている 門構え
長澤敏意(87)
核家族 進んで豪邸 爺と婆
浅野三夫(89)
何もない 我が家の自慢 笑顔です
今野二男(67)
家毎に 昔は国旗 立てていた
佐藤 勉(76)
ヨウオウーと いつでも行ける家がある
庄子義男(77)
実家にも 私の居場所 狭くなり
福井喜六(77)
家がいい 旅も日帰り する私
嶋貫万栄子(71)
楽も苦も 共に過ごした 家いとし
永松江津子(83)
ともかくも 一家支えた 安給料
大場 敬(68)
又リフォーム 百歳越えて 元とろう
安倍繁子(76)
マンションの 谷間に息する 俺の家
高森雅彦(84)
お題「寺」
振替紙 いつも同封 寺の便
渡辺セキ子(78)
頭では 坊主に負けぬ 歳となり
及川英夫(67)
葬儀料 貯めなきゃとても 死なれない
高橋キヨ子(82)
春彼岸 忘れられてる 墓があり
庄子勝子(64)
戒名は お布施次第で 寺まかせ
堀江良彦(64)
坊さんの 説教身にしむ 年になり
鈴木紀子(66)
よろしくと 隣の墓にも 手を合わせ
佐々木隆雄(68)
散歩道 寺の石段 お借りして
伊藤勇子(69)
古寺で 遊ぶ子供の 姿なし
濱屋勇蔵(69)
彼岸待ち 寺の笑顔が 花で染め
山口省三(71)
過疎の寺 団地ができて 大繁盛
兎原健夫(71)
寺社巡り 常とは違う 顔をして
佐藤とし子(72)
里人の 心のささえ 村の寺
貝沼このえ(72)
神仏を嫌い 世を拗ね 自我を張り
伊藤英哉(72)
寺守り 長男引き受け 一安心
斎藤帝子(73)
我が心 古寺観光で 気を清め
谷井啓路(74)
お寺さん 第二の実家 頼みます
宇南山礼子(74)
子供達よ 万が一でも 先逝くな
安倍繁子(77)
菩提寺を 移す話に のらぬ老い
富樫辰夫(77)
思い出は お寺墓場の かくれんぼ
高橋哲彌(78)
葬儀社と 医者、寺親しく 憂いなく
須藤好敏(78)
春うらら 亡夫待つ寺へ おしゃれして
小野すえ子79)
また来るね ふり返りつつ 寺の坂
冨成久江(81)
静寂な お寺で今日は 写経する
後藤掃雲(81)
怖かった 暗いお寺の 地獄絵図
菅原えい(81)
核家族 いずれお寺で 大家族
大友榮一(81)
混迷に 一言欲しき 寺社の弁
亀卦川篤(82)
ビル群に お寺の鐘が 聞こえない
大友夏男(82)
お布施には 公定価格の ない不思議
渡辺芳夫(82)
幼少に 覚えしお経 墓の前
弓田利男(82)
長生きし 仲間の弔辞 毎度読み
小野隆夫(83)
久しぶり 墓と主人に 声かける
立身 由(89)
寺の鐘 心身共々 清められ
高橋イツコ(93)
寺子屋の 教えは今は 身に沁みる
高橋時雄(96)
時は金 読経時間でわかる 布施の高
丹野典子(63)
生前葬 忘れるほどに 長生きし
遠藤英子(69)
幼な頃 寺の鏡見て 逃げたっけ
大泉忠夫(70)
広告に 墓の値段も 写真入り
石森朝子(73)
なんとなく 秘密にしたい 布施の多寡
三浦 和(78)
戒名に 定価があって 唖然とし
吉江弘敏(78)
墓石の 縦横悩む 祖父母かな
大村ゆき子(80)
一人来て ぽっくり寺に 願をかけ
曽良みや子(83)
お寺様 あの世この世の 掛け橋か
小林吉平(85)
経唱え 心穏やか 寺参り
長澤敏意(87)
寺の門 くぐりて過去は ゼロになり
中川由紀子(64)
夢を見た 未だ来れないと 墓参り
新井和子(66)
一生涯 寺は行かぬと だだをこね
佐竹順子(67)
先祖様 いつも身近に 居る思い
今野二男(67)
戦時中 疎開と言えば 寺だった
吉田征四郎(67)
我が葬送 寺を選ぶも 生仕事
後藤予し子(68)
近づこう いつかは世話に なるお寺
村主利夫(68)
無住職 お寺の鐘が 淋しそう
小松政治(69)
墓参り ビルの屋上 エレベータ
鈴木 實(72)
寺街に 住んで鐘の音 なつかしく
石田シズエ(74)
墓建てて 祖父母元気で 役立たず
福井喜六(77)
お経より ガイド熱心 和尚さん
庄子謙市(83)
山門を くぐると凛と する空気
千葉きよ子(62)
金がない 院居士なんか いらないよ
高橋 勉(62)
今時の 和尚さんちは 実業家
林 忠夫(68)
早々に 寺墓地決めて どちら先
嶋貫万栄子(71)
マンションの 谷間になった 町の寺
山岡京子(72)
「ありがとう」墓石に刻まれ 立ち止まる
高橋知杏(76)
建て替えて 競い合ってる お寺さま
大塚光太(79)
八十路すぎ 元気で参る コロリ寺
三宅 豊(73)
老人に 墓地はいかが という無情
星 三男(73)
凡人の 坐禅悟りのない瞑想
加藤いさお(75)
寺隣 宗派違いで 悩む父
佐藤 晃(75)
お坊さん お寺企業の サラリーマン
大場貞助(79)
お寺さん 送ってほしい 極楽に
大石大介(80)
寿限無を 速読したら 入歯飛び
伊藤ワカ(81)
過疎の寺 打つ手鐘の音 全自動
太田良喜(63)
ウォーキング 寺社巡りの 研修会
小赤沢ツヤ子(70)
ご先祖に 感謝の誓い 寺参り
高橋満博(70)
坊さんは 地獄へ行かぬ 顔してる
高森雅彦(85)
お布施には 公定価格ない 不思議
渡辺芳夫(80)
新会員 戒名により 座が決まり
石森孝義(69)
お題「守 る」
父母の 写真が私の 守り神
矢野伸子(76)
守られる 齢になっても 守りたがり
小野すえ子(76)
戦時中 千人針で 身を守る
菊地昭治(76)
命令で 前線守る 兵無言
手塚 廣(83)
守るべき 何があるのか 自問する
鈴木泰平(84)
目の前に 守護神気取る 夫がいる
高橋和子(63)
この体 杖一本が 守る神
菅野宏司(71)
身を守る 防犯チラシ しかと読み
半澤百子(74)
老いてまだ 自分を守れる うちが華
永松江津子(80)
青春時代 国を守った 自負がある
佐藤春男(81)
子守歌 テレビが代わり 役果たし
内海と志(87)
墓守り 無くて散骨 考える
東海四四二(90)
やさしさに 守られてたと 後で知り
中嶋小夜子(60)
職退いて 少し狭まれ 守備範囲
星 三男(71)
お題「新」
日々新た 残る人生 花よ咲け
矢野伸子(76)
新年が 来るたび母の背 丸くなる
西宮トキエ(79)
新妻の 三歩下がった 国いずこ
菅原えい(79)
紅をさし 老妻新春に 華を添え
高橋亮平(68)
年明けて 心新らし 身は古し
笹本誤調(76)
老人ホーム 火星に作る 新時代
伊勢武子(70)
新春に 家長の提言 元気なく
鈴木千代(71)
新米を 食べても不満 平和ボケ
佐藤 勉(74)
新年は 過去を問わない 妻といる
阿部眞人(67)
お題「学」
学舎や 昔なつかし ゲンコツ先生
鎌田やすの(73)
戦時下の 空白埋める シニア大
貝沼このえ(70)
古稀にして 初のお稽古 演歌道
鬼怒川勢子(70)
先ず学べ 優しい心と 耐えること
矢野伸子(76)
漢字だけ 学のあるとこ 孫に見せ
菅原えい(79)
終わらない 生涯学習に 生かされる
石森朝子(71)
明治には 親には孝と 学ばされ
正木正治(82)
年の功 知恵が光っている 無学
高澤千恵子(64)
人生に 邪魔にならない 学んだもの
吉田征四郎(65)
若い頃 サボったつけを 今学ぶ
戸田 信
無学でも 子等に教えた 人の道
佐藤政弘(79)
今はただ 寄付が母校と つなぐ縁
庄子謙市(80)
ボケ防止 昔のソロバン 探し出す
半澤百子(75)
晩学を 支える眼鏡 曇りがち
佐藤春男(81)
ボケ防止 ゴミ選別に 一工夫 土
加川邦子(86)
経験が 学歴親父の コメ作り
星 三男(71)
学歴は 老壮大学三年生
梁川正三(74)
お題「電 話」
ジジでない 証拠に携帯 腰にさげ
及川ろく(74)
一人居は 電話なければ 無言の日
貝沼このえ(70)
電話ベル 今度は何の セールスか
小澤政幸(79)
脅迫も 鳴り方同じ 電話ベル
渡辺芳夫(80)
留守電に 亡夫の声が 流れくる
手塚 廣(83)
妻三姉妹 規制が欲しい 長電話
小林 敏(74)
電話番号 引越先を 亡夫知らず
笹原愛子(80)
携帯で 抱きしめられぬ 孫の声
高澤千恵子(64)
暇な祖父 セールス電話で 長話
大泉みつ子(68)
嫁よりも 早く聞きたい 孫の声
大村武子(72)
モチモチの 声爺婆で 取り合いっこ
半澤百子(75)
電話帳から 戦友消えて 一周忌
佐藤春男(81)
おれおれと ゆう電話さえ 我欲しや
大堀ハル(92)
留守電に 亡き夫の声 涙ぐむ
中嶋小夜子(60)
お題「夢」
女房には 話せぬ夢を 二度も見た
渡辺芳夫(80)
夢に出る 亡夫の笑顔に 安堵する
内海と志(87)
夢でなく 戦争の無い 平和な日
鈴木紀子(64)
夢旅行 土産ないのが 玉にきず
菅原 淳(69)
三百円 大夢買って 大晦日
谷井啓路(72)
青春の 夢まだ一杯 古鞄
多田嘉雄(72)
居眠りが できる程度の 治安良き
大平 昭(74)
孫の夢 かなう時まで 生きてたい
森本淳子(75)
夢でさえ 若いと言われ ホッとする
氏家さゆき(75)
点滴が ビールに見えて 朝が来る
富樫辰夫(76)
夢に見る 彼と私は 齢とらず
菅原えい(79)
若さとは でっかい夢の あるかなし
丹野典子(60)
分身へ 託して夢見る 祖父の顔
菅原文代(63)
添いとげて 今も二人は 夢ン中
小野秀男(84)
禁酒した 夫の夢は ネオン街
大泉みつ子(68)
現実と 夢との区別 つかぬ世に
山崎浩栄(71)
夢でいい 亡夫に告げたい 喜びを
白井貞子(85)
夢さめて 九十の我が身 車椅子
大堀ハル(92)
亡き人々 夢で遊べる 皆笑顔
前田河とみ(97)
夢だった 嫁と笑顔の 同じ屋根
大場 敬(66)
大らかな 夢のオアシス 児童展
郷家 榮(73)
子の荷物 ならないことが 今の夢
石川よし子(74)
夢の中 妻との出会い 九年ぶり
高森雅彦(82)
お題「川柳」
お墓には 川柳刻んで 楽しもう
鬼怒川勢子(72)
病み上がり 川柳おかげ 指元気
大村昴星
わが遺産 川柳で説く 戦の愚
菅原えい(81)
五七五 心豊かに 老いるため
笠原京子(72)
散らしたい 心の雲を 川柳で
菅野美春(75)
川柳で 忠告すれば トゲ立たず
高森雅彦(83)
川柳を 懸命につくる 百面相
加茂英雄(72)
川柳で 心の病 吹き飛ばそ
佐藤とし子(71)
錆頭 磨くに川柳 最適よ
前田河とみ(98)
川柳に 綴る心の 人生譜
菅野美春(76)
お題なし
譲られる 席へお礼の 飴を持ち
高沢照夫(79)
じっと見る シワシワの手に 感謝状
大石大介(78)
娘来て 高いところは ピッカピカ
庄子衛子(84)
戦苦をば 無理矢理忘る 老齢者
黒川平司(80)
CMも 暇の頭脳を 楽しませ
嶋貫万栄子(71)
アフリカの 子供にあげたい 庭の柿
古田正吉(80)
少子化に 公園デビュー 老集う
糸井綾子(77)
選ぶのは 候補者よりも 行く行かぬ
佐藤昌敏(69)
じじばばが 公園の中 子等は路地
加茂英雄(72)
扇風機 うちわに劣る 風の味
相原勝美(83)
補聴器に するりと入る 打球音
渡辺芳夫(82)
嘘つかぬ 鏡は曇った ままでいい
遠藤英子(68)
長寿国 聞こえは良いが 国こまる
植野静夫(82)
愛のむち 忘れた親に 来る報い
村主利夫(67)
欲しいなあ 背中をかいて くれる人
千葉敬子(80)
世界技に 直す時かな 国技館
佐藤六雄(81)
一行の 添え書き身に沁む 年賀状
小笠原登美子(77)
地図要らぬ 冥土の旅に 或る日立つ
渡辺芳夫(81)
せめてもの 私の生きがい 義援金
白井貞子(86)
雑念を 捨てて赤子に 戻りたい
小白正敏(73)
テレビ漬け 今は一介の 解説者
佐藤政弘(79)
デジタルは 断固拒否だと 大気焔
小野秀男(83)
還暦会 「素敵ですわ」が 合言葉
丹野典子(60)
七十を 童に返す ひな祭り
小林時春(70)
九十歳 人口減少 なんのその
奈良正八(90)
狭き門 特老ホームと 就職口
大場貞助(77)
新緑に ウグイス補聴器 つかまえる
千田幸子(72)
一日も 同じことない 生きた日々
峯浦耘蔵(82)
死ぬときは 皆が初心者 右ならえ
豊田真次(62)
不自由に 耐える長生き 覚悟する
千田幸子(73)
元気だけ 喜び合って 新年会
白井貞子(87)
まな板に 載せて切りたい 核弾頭
村上新吉(69)
皺の数 人間生きた 勲章だ
植野静夫(80)
シルバー川柳 優秀賞 選考方法
選考方法は、みやぎシルバーネット紙に平成16年1月号から同18年4月号までに投稿された約2万5千句の中から、添田星人氏と発行人の千葉雅俊が慎重に討議を行った結果、冒頭の5作品が最優秀賞に決定しました。
【総評 添田星人】選句をしていて楽しい場合と、それほどでもないときがあるが、シルバー川柳との賑やかな出会いはもう楽しく仕方がない。思わずドキッとするような作品が顔を出してくるからだ。身近な題材の新しい発見や、思いもよらぬ角度からの切り口など一人一人の問題意識が作品となって立ち向かってくる。そう沸き立つような川柳力が感じられる。戦前から戦後の川柳は、その三要素として「滑稽」「穿ち」「風刺」を採り入れる人が多かった。昭和30年頃からいわゆる現代川柳の風潮として三要素より「詩性」や「社会性」が重視され、句姿も伝統川柳とは一線を画するようになった。近年に至ってこの三要素が再び見直されつつある。シルバー川柳にもこの三要素が認められるが、どちらかというと「穿ち」(うがち)の句が少ない。「穿ち」は川柳発生以来の不動の構成要件ではあるが、初心者には会得するまでかなりの実作経験を要するようである。みなさんからも、思わず膝を打つ「穿ち」の作品をたくさん見せてもらいたいと期待している。