お便り/お別れカード

 新聞の投稿に『訃報の手紙』と題したエッセーが載っていた。読み進むと、「前略 私儀○月○日、死去いたしました」と故人本人から友人へ送られた最後の自筆の手紙のことだった。「あっ!私と同じ考えの人がいる」。でも中身の内容がかなり違うと婆さんは思った。
 婆さんが『お別れカード』を作ったのは、3年前。婆さんは喪中のハガキが嫌い。自分の言葉で、お別れがしたいと思った。『生前、母がお世話になりました』なんて喪中ハガキを家族から出して欲しくない。自分の言葉で『ありがとう』を言って旅立ちたい。それも、受け取った相手がめそめそするハガキではなく、笑える『ありがとうカード』を作った。そのために、明るく笑える川柳を3句、真っ先に書いた。
 仕事熱心な千葉編集長は、即座に「頂戴!」と催促した。まだ婆さんが生きていると言うのに…。婆さんは断り切れず、編集長に『ありがとうカード』を送った。然し紙面に載せるのは、婆さんが旅立った後にと約束。編集長は婆さんとの約束を3年間守っている。でも、婆さんは死にそうでなかなか死なない。もう約束は解禁しても良いように思えた。
 時代はすさまじい勢いで変化している。死んでから、見も知らない故人の家族からの喪中ハガキで知らされるより、自分の言葉で、お世話になった人々に『ありがとう』とお別れの挨拶をする方が良いのでは無いだろうか? めそめそする文章ではなく、明るくお別れがしたいと婆さんは想う。その時に、川柳は最適だ。
 『ありがとうカード』の文章は、相手によって一人ずつ異なる。受け取った相手は婆さんらしい! と涙を流さず笑ってくれるカードにした。よ〜い万端。婆さんは毎日、死神さんのお迎えを待っている。

吉田千秋92 大阪府豊中市

吉田さんから届いた筆者宛の「ありがとうカード」
カードを開くと川柳とメッセージが

(編集長のつぶやき)「そろそろ載せてもいい」みたいなことをおっしゃっていたので、載せちゃいました(笑)。「ありがとうカード」、とても良いアイデア。生き抜いてあの世に行けるのなら、スッキリサッパリお別れを告げて、笑いの一つもプレゼントしたいものです。差し上げたい方がいれば、私も見習って作りたいです。いざとなってからでは、何も出来ませんからねぇ!