お便り/これは芸術だ

 昔「芸術は爆発だ」という名言がありました。
 小雪舞うある日、巨木が立ち並ぶ小径を散歩しました。小径には落ち葉が沢山敷き詰められていて踏みつけるとカサカサと柔らかい音がします。
 しばらく歩くと小径は二つに分かれています。階段を下り二つの橋を渡り奥に進むと、工!と目を疑いたくなるような光景を発見しました。発見したと言うよりも、彼に言わせれば、かなり以前からここに鎮座していたよと。自然界にはない光景でしたが、私は即座に「これは芸術だ」と直感しました。拝むような気持ちで手を合せてしまいました。たぶん、その意味で誰かがここに新しい芸術の場を提供してくれたのでしょうと肯定的に捕らえることにしました。
 若い方には想像がつかないかもしれませんが、昭和の私には懐かしい、珍しい光景でした、思わずブラボーと声を出しカメラのシャッターを切りました。そこからはカチカチと何かを廻すような音が聞こえ、想像するに電子で光る赤い球の様な物が一本奥の方にありました。確か、昭和四十年代我が家にも彼は来ました。学校から帰ると一時間だけ彼と遊ぶことができました。しかし、当時はまだまだ貴重な存在でしたので後は父親に占有され仕方なく部屋に入り勉強するしかありませんでした。君は、いつまでもここに、最後の最後に欠片に朽ち果てるまで鎮座し、ここを散歩する人に何らかの感動を与えてください、頑張ってくださいと声をかけてその場を立ち去りました。数ヶ月後再び彼のもとを訪れてみました。彼は元気に頑張っていました。柔らかい春の日差しの中で緑のそよ風を浴びながら、それはそれで情緒があると思いました。今回は彼のために物と場所が特定されないよう一部抽象的な表現とさせていただきました。

菱沼俊行76 泉区将監(投稿:2023年4月)

(編集長のつぶやき)気になりますね、なんなんですかね?みなさんは、何だと思われますか?