お便り/7月号の未掲載分
トロントは北のハリウッド
ジミー狩野(牧男)85歳 カナダ・トロント
激震が走った。カナダで撮影されたアメリカ映画にトランプが100%の関税をかけると発表したからだ。カナダのトロントは昔から「ハリウッドノース」(北のハリウッド)と呼ばれ、映画やテレビドラマの撮影、編集、制作などの映画産業が大変盛んだ。 ディズニープロダクションをはじめ有名な映画プロダクションやエージェントがトロントに集中している。 トロントでは映画制作に広大な港湾の跡地に新たに巨大な映画撮影のスタジオなどを建設すると発表したばかりだった。トロント市長も「世界中から映画制作を誘致する」とコメントし熱の入れようだ。 北米最大の映画祭が開催されるトロントでは、数多くの映画やテレビドラマ、ミュージックビデオなどの撮影が行われていることでも知られる。
トロントで映画産業が盛んな理由として、トロントで映画を制作すると、映画やテレビ業界の人件費に対して最大45%、総製作費に対しては最大35.2%の税金を節約できる税制優遇措置があり、アメリカのハリウッドに比べて製作費が格段に安く抑えられる。それに加え、トロントの街並みがニューヨークやシカゴに似ているということからも映画ロケ地として大変人気がある。時には東京の街になったりもする。過去に東京渋谷のスクランブル交差点を再現したこともあった。つい最近話題になった真田広之主演・製作のハリウッド戦国ドラマの「SHOGUN将軍」もカナダで撮影された。 映画やテレビドラマなどに関連する情報を集めたデータベースを調べると、2021年11月現在13,500本以上の映画やテレビドラマなどがトロントで撮影されているというから驚きだ。なお、2022年一年間だけでも約500本以上の映画とテレビドラマなどがトロント市とオンタリオ州内で制作されている 昔からトロントの街を歩くとどこかで必ず映画撮影が行われている。街自体がまるで映画の撮影現場のようだ。 トロントは移民が多くまた市内には移民たちが作ったエスニックタウンがあり、一ヶ所で各国の街並みや異国の舞台を再現しやすいこと、しかもトロント市は人種のモザイクと言われるほど移民の国らしく映画制作に必要なさまざまな人種を簡単に探せるという。そのための人材派遣エージェントも市内にはたくさんあり、アジア人専門の人材派遣エージェントもある。 俳優のランクは主演級アクターを筆頭にコー・スターリング(助演)とバックグラウンドアクターでセリフありとセリフなしに別れる。また、俳優協会に所属するか否かでもランクが異なる。その下にはいわゆる通行人とか群衆の中の一人として演技をするエキストラなどに分けられる。
ところで、私は50年前からカナダ俳優協会(ACTRA)にも所属する映画俳優で声優の仕事もして来た。私が映画俳優になったきっかけは、ラジオ・アナウンサー時代にテレビ局で映画プロデューサーにスカウトされたのだった。 10年前に他界した息子も俳優で同じ映画で共演したこともある。ちなみに、息子が最後に出演した映画は2010年製作の「バイオハザードⅣアフターライフ」だった。(下記別表リストのNO.10) 私も息子もカナダ俳優協会所属でセリフのあるバックグラウンド・アクターだった。(注;バックグラウンドアクターとは、通常シーンの背景に登場し、映画・テレビ番組、その他の作品に、よりリアルな生き生きとした雰囲気と臨場感を与える重要な役割を果たす。) また、日本で紹介された映像では、私が出演した最後のテレビ・コマーシャルで「フェデラルエックスプレス」(FedEx)では主役を演じ「世界まる見え!テレビ特捜部」(日本テレビ系列)の「北米で活躍する日系人俳優」としてこのCMが紹介された。なお、「藤原喜明さんが熊と戦った」(テレビ東京系列)撮影では現地コーディネーターとしてまた出川哲朗さんらと共演した。これは大変評判になった映像なので、読者の方でもしかしたらご覧になった方もおられると思う。(“藤原喜明・熊”とyahoo で検索すると未だ映像が観られると思う。) なお、私の映画やテレビ・ドラマ出演の話は折を見て改めて紹介したい。 支離滅裂とも言えるトランプの「アメリカ第一主義」で、映画産業をハリウッドに戻すという目標はいいことだと思う。が、トランプはなぜこの映画産業がアメリカのハリウッドからなくなったのかをもっとよく勉強をする必要があるようだ。
*トロントで撮影された代表的な映画は下記の次の通り。
1、赤毛のアン・シリーズ。
2、ザ・フライ(1986)
3、ポリスアカデミー(1984)
4、ポリスアカデミー3全員再訓練!(1986)
5、グッド・ウィル・ハンティング旅立ち(1997)
6、アメリカン・サイコ(2000)
7、X -メン(2000)
8、シカゴ(2002)
9、バイオハザードIIアポカリプス(2004)
10、バイオハザードIVアフターライフ(2010)
11、インクレディブル・ハルク(2008)
12、スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団(2010)
13、パシフィック・リム(2013)
14、スーサイド・スクワット(2016)
15、シェープ・オブ・ウォーター(2017)
16、IT/イット ”それ” が見えたら、終わり。(2017)// IT/イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。(2019)
17、シャザム!(2019)
18、ザ・ボーイズ(2019~)
19、クイーンズ・ギャンビット(2020)
20、SUITS / スーツ(2011 ~2019)
https://www.imdb.com/search/title/?locations=toronto,%20ontario,%20canada
上記サイトには、トロント、オンタリオ州及びカナダ国内で撮影された映画が、17,182本登録されている。(2025年5月24日現在)